レースのデータを客観的に活かすためには、常日頃の継続的なデータの観察が必要になります。
この心拍数、パワー、ケイデンス、スピードだけを見て、良くやった、良く出来た、とか、たいしたことない、というのは断片的な評価となってしまいますから。
加えて、主観(レポート)から判断できる、その日のコンディション、展開、戦術といった数値だけではないことも加味しなければなりません。どんな状態で、何が起こったから、という状況的な要素も重要です。
では、データを見ていきましょう。
まず、指標のカーブのグラフですが、赤の折れ線が心拍数(HR)の推移で、そのバッググラウンドにあり色分けされているのが、Target Zoneです。
HRは、スタートから穏やかに上昇し、3分程度でHardZoneに入っています。スタートダッシュをせずに、集団に身を任せ流れるようにしていました。
TTでは、スタートは重要なポイントです。ここで、HRが一気に上がるような負荷をかけてしまうと(HRが一気に上がる高いパワーを発揮してしまうと、とも言い換えられます)、そこでの酸素や代謝の負債が後々響いてきます。
この負債を処理するためにHRが上昇し、ハーハー、ドキドキいっている割にはパワーが低下している状態に陥ってしまいます。
ここからは集団内にいまして、勾配がなだらかなところでは回転、トルクを落としてもスピードが高かったり、勾配が上がると400Wを超える高いパワーが出ています。先頭は一定的に高いパワーで走っているのでしょう。集団内ではドラフティング効果もあり、このようにムラのある状態で推移しています。集団を上手く利用できれば、脚を休めつつ、必要なパワーを発揮して、効率よくスピードを稼げます。一瞬、脚を止めても38km出ているところもあります。
勾配との関係も考慮した見方をするときに、横軸を時間ではなく、距離にすると地形と速度との関係が見やすくなります。
CP1付近に、HRの谷間があります。その直前にはパワー(下のグレーライン)の谷間があります。勾配(茶色ライン)が穏やかになって休めたようです。加えて、レポートから集団のペースも緩んだことと一致しています。
しかしそこから再び一気に上昇します。2位フィニッシュの選手が集団先頭に立ちペースがまた上がったのです。レース中の最高心拍数であった181bpmまで上がっています。この時から、ハイペースに耐えられなくなりマイペースに切り替えるまでの、4分30秒間には、平均HR178bpm、84rpm、351w!平均勾配5.6%で23.3kmの平均速度です!これを維持できるトップの能力がどれだけ凄いのかよく分かります。
マイペースに切り替えてからCP2手前、冷泉小屋付近で前方の集団との差も開いていきました。そこまでの平均は178bpm、85rpm、320w、そこの標高はおよそ2000m、概ねこの辺から自覚的に高地的な辛さを感じました。
そこからゴールまでの平均は、176bpm、83rpm、306w。主観的には、できるだけイーブンペースを心がけましたが、それでも、落ち込みがみられます。中盤のハイペース、そして高地ということがパフォーマンスに影響していそうです。
CP1以降はマイペースということもあり、パワーとケイデンスを保つようにメーターも時折確認していました。具体的には 80rpm、300wを割らないようにシフトチェンジしました。39x28Tまで用意していたので、筋的な疲労を感じてからもケイデンスを高く保つことで、パワーを維持できました。
現役時代と比べて、明らかに筋肉、筋力が減少しているので、それをカバーするために動作速度を上げていく必要もあり、高いケイデンスで走るようにしています。
最後の1kmは前方の選手を追っているわけではありませんが、気合でパワーの落ち込みを防いで踏ん張った結果、HRは僅かに上昇を示しています。
最後は、どれだけ歯を食いしばれるか!気合いです、根性です。科学的な用語で言うと、メンタルの強さです。メーターを見ているば強くなるのではなく、メーターを指標にどれだけ自分を律せられるか、追い込めるかということです。
結果的には、トレーニングが決定的に不足している中で、上手く持てる能力、経験を活かして走れたことが、データからも読み取れます。
今後の改善としては、やはりコンスタントな中高強度のトレーニングを行う必要があります。
5分=360W以上、15分=340W以上、というのがまずは先頭についていくための獲得目標のパワーです。
現役バリバリの時は6分400W、30分340Wを出せましたが、今はそれだけ低下しています。当たり前の事実ですが、トレーニングをしたら能力は向上しますし、しなければ消失してしまいます。
ここまでわかって、さて来年はどうとりくもうかな~