2010年12月23日木曜日

バイクの動作、重心、胴体

とある、超有名トライアスロンコーチへのラブレターの返信です。
書き始めたら、長編になってしまったので、ここでも公開したいと思います~






ロードバイクとトライアスロンバイク、TTバイクも基本は同じですが、
バイクと、ラン、スイムは、全く違うと思っています。

バイクは定常、巡航において、車体が高速で前に進んでいるので、慣性が働いています。
その上に乗っているライダーにも当然同じ慣性が働いていますので、すでに重心の移動は慣性で
絶えず起こり続けているわけですから、体の重心移動、というのは錯覚であることが分かります。
バイクに動力を与えているもの、人はエンジンであり、エンジンは定位にあるほうが出力、伝達効率が高いはずです。

ランとスイムは実際に、体そのものを動かし運んでいるので、動かなければ停まってしまいます。
慣性が働く状況はもちろんありますが、基本的に、四肢を用いて地面、水面に作用、外力を与えることで、その反作用で
体が前に押し進められているはずです。

バイクはペダルに作用していますので、外力はペダル、反作用もそこから起こりますので、かけた逆方向にかかります。
パワーが発生している瞬間、股関節では、大腿を踏み込みながら、腰は起き上がるように、膝関節は、頸が押し戻されるように、
イメージとしては体を浮かすように働くように、反作用は起こっていると考えられます。
ペダルに大きな力をかけた状況では、その反作用で、脛が下がりづらく、腰が、そして胴体が持ち上げられる、それが顕著になることが分かります。

股関節、膝関節の進展筋群が力をかけて、ペダルをまわす力が最大になるのは、それに加えて、脚の重さという力が垂直に加わる、3時、90度のときに最大になりやすいのですが、そのときに反作用も最大になると考えられていますので、そこで胴体を強く浮かすように感じるのはそのためです。上死点では、ペダルは前方へ動く瞬間ですので、体は後ろに押されます。

いくら大きな力をペダルにかけたとしても、胴体、とくに腰が前後、上下、左右に動いてしまっては、ペダルには有効な力は作用させられていない、つまりは筋力発揮は大きくてもペダリングパワーは大きくならないのです。
ゆえに腰は上記エンジンのように定位に保てるように、この反作用とうまく折り合いをつけていかなければなりません。

反作用の方向と逆に、作用方向に向かう壁となる力を及ぼす必要があり、それが腰、胴体の角度、位置ということになります。
右脚が上死点で踏み込むとき、腰は後ろに押されますが、左脚を持ち上げていること、股関節の屈曲において、腰はその反作用で前に引っ張られますので、左右が対となるペダリングの特性で相殺されます。
3時の位置に向かうときには、反作用の方向が後ろから上に変化していきます。このときに壁となるべく力は何を及ぼすか?が重要です。

上方だから下方に及ぼす力を必要としますが、それをハンドルをひきつける腕や肩の力という筋力で胴体を固定するのもひとつの方法です。ですが、大きな脚の力に、腕の力で拮抗させれるのは、競輪選手などの屈強の腕と肩周りの筋肉を有する身体特性、それでも、数秒という極短時間(脚でも腕でも大きな筋力、エネルギーを使うこともあり)しか力を及ぼすことが出来ません。
1000wというような大きな出力、高回転x高トルク、には、それが必要ですが、300~400Wという相対的低トルクにおいてはそこまでの力は必要ないですし、もっと長い持続が求められるわけですから、それは現実的ではありません。

そこで、誰にでも及ぼされている上から下方に向かう力、引力であり、重力がうまく及ぶように合わせていくのです。人間という複雑な形をした物体の重さのかかる中心位置、重心はサドルを支点とした胴体直立姿勢のときには体の真下、つまりサドルにかかっています。ここから、ペダルが3時の位置に重心を持ってくるには、その位置を前進させる、つまり前傾姿勢になってより重心位置を前にしていくことで、反作用で体が持ち上げられない位置に合わせていくのです。
さらに、右脚がかけるという事は左方向に体は反作用で押されますので、僅かに重心も左に移動していきますので、今度は、左脚の3時に合わせるようになり、左右が対となるペダリングの特性がここでも生きていきます。

ですから、バイクで感じるとされる重心移動は、反作用の結果で、それを相殺される位置に合わせるだけであり、意識して体を左右に前後に動かすのではないのです(ダンシングにおいては、サドルという体を真ん中に保つ支点が失われますので、脚の動作にともない、左右、前後、上下に重心が移動してしまいますので、常にそれを真ん中に戻す、あるいは保つ負担が必要になります)。

ちなみに、肩で踏む、という感覚を覚える方は、肩の真下にあるペダルの反作用を感じて、そこの上に肩を持ってくるような前傾姿勢がとれていることで、大きな力をかけた反作用を相殺して、大きなパワーを発生させられている、ということです。

動作の面で簡単に言えば、ペダルにかけている力と、胴体の前傾角度は比例すべき、といえます。
大きな力のときは、より深く、小さなときはより浅く、ということです。
そして、それがつりあっているときは、胴体(腹筋群と背筋群で適切に保たれている場合)は、踏み込み力で前傾が支えられていると言えます。この結果、腕には、押しも引きもしないというリラックスしているはずです。ハンドルは強く握り、腕に力を入れて支えるのではなく、あくまでも体の補助的な支持点であり、バイクの操縦桿です。
深い胴体の前傾が取れないのは、そもそも胴体を適切に保つ、保持力、いわゆるコアスタビリティ、ストレングスがたりない、あるいは、踏み込みの力を作用する筋力、脚の筋力も足りないのかもしれません。

またパフォーマンスに関しての考察ですが、ペダルにより大きく力をかけるには、その反作用の克服として、脚のかけられる力よりも、より大きな力を胴体でかけられる必要であり、それは前傾角とかけられる重さに比例してくることから、質量的に大きな胴体が求められるのではないか、と考えています。この時、脂肪で重さを出してもいいのですが、断熱材として生理的な負担をかけることとがありますので不適ですし、胴体の保持力を高める必要も比例的に高まりますので、そのための筋肉増加により重さを増したほうが効果的です。太い胴体を形成する筋肉をどのような手段を用いて獲得する必要が、脚の出力発揮を高めるために重要というアプローチに取り組んでいます。

さらにいうならば、、前傾角度が深くなると骨盤と大腿骨との角度が狭くなります。これにより股関節進展群の予備伸張と動作範囲を大きくとれるようになるので、大きな筋力をペダルに作用させられます。より多くの筋肉、より大きな筋肉を、より強く収縮させることで、筋力動員を大きくなっているのです(ただし稼動範囲が大きいということは、行って帰るという動作速度が落ちますので、ケイデンスがあがりずらくなります)。

この面においても、大きな力のときは、より深く、小さなときはより浅く、ということに符合します。

さらに大きな力が作用すれば、速度が増しますので、それに比例して空気抵抗も増加していきます。これを減らすため、前面投影面積を小さくするためにも、胴体の前傾角は深いほうがいいのです。


以上を踏まえた上での、それぞれの身体特性にあわせて、バイクをフィットさせていく必要があります。
トライアスロンバイク、TTバイクにおいてもそれは全く同様です。
前傾の度合いがより大きく取り合成重心位置をさらに、相対的に狭くなるハンドルとの距離を腕ではなく肘にすることで相殺する、というアレンジを施すと考えています。