2013年9月4日水曜日

アイアンマン・ジャパン レースレポート

当初、今回のレースは、アイアンマン・ハワイを中5週間で迎えますので、疲れを残さずに2014年のスロットゲットを目論んでいました。


なるべく体の疲労を残さないように、バイクである程度の差をつけたら、往復ランコースで後続との差を確認して、スロットがある5,6位まで順位を落としても、楽々終わろうと思っていました。
体に残る疲労は、ランのダメージ、そしてエネルギーの枯渇に起因するので、スロットを取れればランを極端な話、歩いてでもいいやと。

しかし、会場に到着しているとその思いは一変しました。この巨大イベントを創り上げるために動いている方々の情熱と行動を感じると、そんな生半可な気持ちで走るのは失礼だな、と。

そして、一緒に朝スイムでトレーニングをしていた方が、不慮の事故でこのレースに出られず、辛く大変な思いをしているのに、なんと現地に応援に来られたのです。


「応援しています!」

そんな声を受けて、とても多くの方にも頂戴しましたが、いや流して走ろうかと思います、なんて恥ずかしくてとても言えません。

「はい、全力で行きます!」

そう決めました。

さらに、会場でヤル気みなぎる多くのアスリートと会うと自分にも伝染、俄然ヤル気もヒートアップしました。回復は終わってから考えることにして、スタートしたら、スイム、バイク、ランとフィニッシュまでベストを尽くすことに。


想定していた天候は前日まで雨で寒かったものの、予報では晴れのち曇りで風ほどほどと、絶好のコンディションをイメージ、体調も良好、準備も万端で臨みました。

スイムはケアンズ同様1:12で泳ぎT1含み1時間15分。
バイクはアップダウンがあるので予想が難しいものの、湖畔35km往復70kmを平均38km/hで110分、1800mアップの110kmループを平均32km/hで207分、T2含み計5時間20分。
ランはケアンズ3時間34分を下回る3時間30分。
トータルは10時間05分でのフィニッシュを目指します。



そして結果は、フィニシュは1時間2分14秒、エイジ2位、プロ含む総合20位でした!
スイムは、1:07:58  T1 3:56 含むと 1:11:54、
バイクは、5:13:22 T2 2:35 含むと 5:15:57、
ランは、3:34:23 
と、概ね予想通りで、スイムのタイムが良かったこと、バイクで予想を僅かに上回ったこと、ランで臀筋の疲労があったものの粘り、PBタイでのフィニッシュで、ベストを尽くせました。
去年の初IRONMANから、スイム、バイク、ランのいずれも出場の度にPBを更新しているので、嬉しい限りです。

POLARで記録したレースデータのリンクです。



それでは、各パートを振り返ってみましょう。

スイムパート
ウエットスーツ:メイストーム ゴールドロゴオーダー
ウエア:セパレートトライ、C3fitパフォーマンスアームカバー&ゲイターをウエットの下に着用
ゴーグル:アクアスフィア カイエン

スイムは長い一日の始まりです。周りに合わせ過度に上げ過ぎでオーバーペースにならないように注意し、気分的にはウォーミングアップのつもりで臨みました。

スタートからよく周りを見て落ち着いていきます。前半は流れに乗れるようにして、ヘッドアップを控えめにしながら追従していきます。少しバラけ始めたら、積極的にヘッドアップをしてブイを確認していきますが、遠景のホテルの建物は似ているし、レスキューの黄色、スイムキャップの黄色も沢山見えてかなり見つけづらい感じでした。それでも、第一ブイからの第二ブイはモーターボートも見えていたのでそれを頼りに、近づいていきます。

ここまでに3分後ろのエイジグループに追いつかれ始めました。速い方を参考に、折り返してからは抜かれては付いて、離れては、次の方についてを繰り返し、落ち着きつつもペースを保ちます。逆に、前のエイジに追い付くと、追い抜くときに向きを僅かに変えると進行方向もずれて、あらぬ方向に泳いでしまうこともしばしばあったので、抜いたらヘッドアップで向き修正を心がけました。平泳ぎの方、2~3名のパックを抜く時は、特に注意を必要としました。お互いに過度に当たりゴーグルが外れたりと、いらぬトラブルは避けたいものです。

1周目終了後、RCX5のラップを確認すると0:37、倍計算でも1:14とまずまず。2周目は折り返してから上陸なので、もっと速いはず、と意気揚々と再び泳ぎだしました。
2周目は、朝陽が水面に反射してさらに目印が見えずらく、頻繁にヘッドアップを繰り返して、着実に前に進みました。OWSでは急がばまわれ、を徹底しているおかげで、プールでの泳力以上に、スイムパートのタイムは上がっている感じがします。

息が上がらない程度に速い人に抜かれたタイミングで、キックも使い速いペースで泳ぎ、切れたらキック無しのマイペースに切り替えるなどして、無理なくペースアップを計ったりもしてみました。
水温も気持ちよい程度で、水もモーターボートの周りのオイル臭さ以外は無味無臭で、とても泳ぎやすかったです。
ウエットも足が上がり過ぎることなく、肩周りの動かしやすさが半端無く軽く、圧迫やズレもなく軽快に泳げました。


レース後に、POLAR心拍データを見ると平均133bpmと、余裕をもって泳げたことが確認できます。今後はもう少しだけ体力負担を負ってもペースを上げていってもいいかもしれないと考えています。
かなり気持ちよくスイムアップして、T1は急いでウエットを走りながら上半身を抜いで、トランジッションバッグにウエットを押しこみ、ゼッケンベルトを付けるだけで、走ってバイクを押して、飛び乗り
スタート。



バイクパート


バイク:S-Works Shiv Di2
ホイール:前輪 ROVAL CLX40 + 後輪 CLX60
タイヤ:S-Works Turbo 24C
ペダル:POLAR KEO POWER
ヘルメット:SPECIALIZED Evade (欧米サンプル)
シューズ:S-W Trivent
アイウエア:Smith Reactor Max 調光レンズ仕様


補給:
パワージェルx10 ボトルに入れ流動性が出る程度に水で僅かに希釈、30分毎に1個分程度摂取
パワーバー エナジャイズx2 半分に切って4回で摂取
一口羊羹x2
トップスピードx1 バイク半分経過時に摂取
オリゴノールスポーツx1 トランジッション後、ペースが落ち着いた時に摂取


バイクは前半からガンガン!中だるみを抑えつつ、後半はランに備える展開で走りました。
KEO POWERで計測したデータは次の通りです。
スタート後の湖畔は平均282w 38.8km/h、
前半上り基調 60kmまでは283w 31.8km/h、
中盤下り基調100km過ぎまでは250w 38.2km/h、
そこから上って湖畔までは239w 31.4km/h、
T2まで湖畔はランに備えて224w 35.5km/h、
と、ほぼ想定のシナリオ通りに走りきれました。



T1直後はウェーブスタートだったので前走者を抜いていくタイムロスがわりとありました。走り出しから安定した直進ではない方、右側でゆっくり走る方=ブロッキングですね、あるいは道の真中で止まっている方、などバイクはまだまだ重視されていないのかスキルが未熟な方が多く見られました。バイクはタイムを稼ぐ絶好の種目ですので、伸びしろ豊富と思って、ライディングスキルも磨かれることをオススメします。

湖畔も半分を過ぎるとかなり抜け出せて、スムーズに走れるようになります。マイペースでひたすら前を追います。湖畔を離れ上り出すと、途端に前走者が多く見えました。この上りは8’55”、平均 319w 21.0km/hで走り、かなり多くの方を抜きましたが、コース側の応援の方に聞くと、トップは遥か前方とのことでした。

そこからはアップダウンを繰り返しながら最高地点を目指します。平地に見えて微妙に登っている場所も多く、速度もそこそこ出るのでエアロバーポジションでの上りを改善してきた効果があり、スムーズなペダリングでストレスなくクリア出来ました。概ね25kmくらいでエアロポジションかバーポジションかを切り替えましたが、見極めは風向き、ペダリングのスムーズさ、を照らしあわせて決めます。

体を起こす、伏せる、が今回はとても頻繁に行いました。エイドと上りに加えて、コーナリング、ブレーキングなど様々な箇所で、前方確認、安全のために頭を上げ、横を見たりもしました。こんな時にヘルメットが重いと相当な首、肩の負担になります。
今回はエアロロードヘルメット、イヴェードのサンプルを市販に先駆け先行使用しました。空力はTTヘルメットに遜色ないというデータが出ていて、その上、軽く負担がなく、通気性も15km/hを下回る低速でなければ申し分ないとくれば、今後のトライアスロンの定番となるでしょう。ちなみに、T1でもスムーズに被れるので僅かにタイム短縮にもなります。


エイドではボトルのみ補給し、Shivのハイドレーションがなくなったらスペアボトルから補充、それも飲みきったらスポーツドリンクを受け取りました。それ以外は水を受け取り、後頭部、首、脚に掛けて冷却をしました。バイクで曇っていましたが、筋疲労などを冷やして低減するためです。
その後、雨が降り出し、その必要もなくなりましたが。

100kmのグリーンゾーンあたりの最下地点までは下り基調で、ややホイールの空力の足りなさを感じる場面もありました。外国アスリートに上りで追い抜くと下りで追いつかれる場面が何回かあったからです。しかし、全般的には、軽いホイールのチョイスが成功しました。CLX40は乗り心地が良く荒れた路面でもバーからの振動と突き上げが少なく、また挙動が素直なので、雨のコーナー、ブレーキなどでもストレスフリーで、疲労を溜めることがありませんでした。特にそこからのだらだらと延々上る区間は軽いホイール様様でした。疲れ始めた時に軽いホイールは速度を高めに維持しやすいです。重いと、これくらいでいいや、と少し低い速度で妥協して流してしまいがちですが、積極的に緩斜面では速度に乗せていく走りがCLXで可能になりました。

上ってはドカンと下るメリハリの強い後半では、雨が強く降ってきました。辺りも暗く視界が悪くなりがちですが、Smithの調光レンズをチョイスしていたのでそういった変化にも、明るく見やすい視界を確保しました。また調光レンズだと、水滴がついても微妙に照度が変化するのか、余り気にならずに安心して路面状況を把握することが出来ました。穴、ひび割れ、段差、土が流れたり異物なども点在していたので、パンク防止に貢献してくれました。

終盤には、上りで臀筋の負担が掛かっていたので、速度が落ちる場所では積極的にダンシングも入れてスピード維持と疲労の分散も計っていました。いわゆる重めのギアで自重で漕ぐ休むダンシングです。それでもループ橋を下り、湖畔に向かう上り坂ではインナーロー(39x25T)でもやや重く感じ、長距離の疲労があることを自覚しました。ケイデンスも70pmまで落ち込むようになりました。ちなみに一番最初の上りでは80~90rpmで上っています。


復路の湖畔は疲労と向かい風でペースは落ち込んでいますが、パワーは低くともランに備えてリラックスを心がけつつ、頭を低くするようにしたりしてスピードは保ちました。補給も全て飲み切るようにして、無理に前走者を抜かずに温泉街を抜け、木製の段差越えなどでのスリップに気をつけT2に到着。
バイクを預け、ヘルメットをバッグにしまい、ソックスを履き、シューズを履いて、補給を背中に入れ、パワージェルのフラスコを手に持って走りだしました。



ランパート

シューズ:アシックス DS Racer(ケアンズにて購入)
ペース確認:POLAR RCX5+ストライドセンサー
補給:
パワージェルx4 フラスコに入れちょびちょび摂取し、21kmまでに飲みきった
オリゴノールスポーツ スタート後前半のエイドで水分とともに摂取
トップスピード 中盤30km手前で摂取し落ち込みを防ぐ、その後ポケットに入れたパワージェルx1も摂り後半に備えた。
※写真のようにトランジッションバッグの中でバラけないようテープで止めてあります。


ランは3時間30分を目指し、序盤はキロ5分を僅かに下回るペースで刻んで行きました。太郎さんから2周目が勝負だから落ち着いていけ、とアドバイスを貰い、極力リラックスしてペースを保ちました。補給も手に持ったフラスコで前半から積極的に摂ります。エイドではほぼコーラで繋ぎました。
しばらくは普段通りの足運びが出来て軽快感を感じながら走れました。この時、バイクでエイジ1位で帰ってきていたので、各所の折り返して後続との差も確認できて、ひょっとしてこのままイケるかもと思えるほどで、実際にプロ選手ともあまり差が開かなかった感じで進めました。


しかし、実力者がひしめく中で一時の夢を見たようなものでした。普段にはないバイクの上りでの疲労が響き始めて、15km辺りから臀筋、それも弱い左側に違和感を感じ始めました。それはやがて明確に動きの変化となってしまい、着地から離陸がお尻、腰で切換せなくなり、足でキックしてしまうようになってしまいました。それでもペースの落ち込みは最小限にと、フォームはしっかり保ち続け、重心位置も後傾しないように集中しました。臀部とふくらはぎはさらに負担が増して、痛みを覚えるようになりましたので、エイドでスポンジをとり、その部位にかけて冷却をして騙し騙しでしのぎます。そうこうしているうちに2周目に入る前には、ついにエイジ1位に抜かれてしまいます。

2周目にもトイレ(小)に行き、都合2回いきましたが、それで上手くペースは復帰出来た感があります。スイムで水中にいる時間が短いと下痢にならなくなったようです。


痛みに耐え、フォームと足運びに集中して折り返しにたどり着きます。1位との差、エイジ後続との差を確認しました。1位とは広がりつつありましたが、逆に後続とも差を確かにしたようです。この辺りで2位確定を確信しました。しかし、50-54の清悟さんが追い付いてきて凄い速度差で追い越して行きました。ケアンズに続き遠ざかる背中を必死に追うも、力の差は歴然で全く見えなくなってしまいました。いつかは追いつきたい、その思いで一杯です。

そこからは、順位を守れる程度にペースを落とそうか、気の迷いも少しありましたが、10時間を切れるかもしれない、最後までベストを尽くす、と気を持ち直し、最後まで集中を保ち走りきりました。
一度歩くと、歩きぐせが付きそうで今後のマイナスになるかもしれないという心配もありました。


ラスト2kmはスパートで4分台まで上げ、全力を出しきりフィニッシュです。10時間を2分超えてしまいましたが、全力を尽くせたことで満足しています。
これで4回目のIRONMAN、そして3年連続のコナスロットを手に入れました。



レース後、4日経ちますが、体の疲労は重いです。特に筋的な疲労が今回は強く、また、10時間集中していたので脳の疲労はかなりあり、トレーニング再開は週末くらいからになりそうです。しかし、涼しかったのが幸いして、内臓疲労など根の深い疲労感は少ないようです。
IRONMAN World Championshipまで残り5週間です。上手く回復してから、スイム、ランの課題を修正しつつ、バイクはレースイベントで強度を上げていき、調整してコナに臨みたいと思います。

コナは今年と来年の2度のチャンスを得たので、まず今年はチャレンジとして位置づけ、積極的に攻めていこうと思います!
昨年の経験から、バイクももっとペースを上げていけそうなので、コナウインドにも左右はされますが、4時間45~50分を目指してガンガンいきます。

今から次のレースが楽しみでしょうがありません。